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2023年1月11日開催

中国ミニウェビナー       

中国経済の減速とその深層

中国では、2022年秋に第20回共産党大会が開催され今後5年の習近平指導部が固まりました。経済運営面では2022年初めに5.5%の成長目標が掲げられましたが、「ゼロコロナ」の厳しい防疫政策で達成は困難になり、11月より政策の緩和を開始したものの、新規感染者増などで予断を許さない状況が続いています。また、長引く不動産市場の低迷は地方財政を圧迫しています。習近平政権は2015年以降、金融リスクの削減、デ・レバレッジ、不動産リスクの防止などに取り組んできましたが、第20回党大会後に、金融面からの不動産業下支えに動き出し、中央経済工作会議では経済発展を目指す姿勢が明確に打ち出されました。本ミニウェビナーでは中国の足元のマクロ経済や構造改革、金融規制、金融政策の動向を概観し、第3期目の習近平政権下での経済動向を展望しました。

パネリストによるプレゼンテーションでは、福本氏より、減速する中国の中長期成長を左右する要素、20回党大会の経済面のポイント、コロナ政策の大転換、低迷する不動産市場とその見通し、足許の景気と中央経済工作会議のポイントについて、包括的な説明が行われました。3期目に入った習政権は一強体制が固まり、強権政治や忖度が経済運営に与える懸念も強まっているものの、長期政権として「質の高い発展」を目指す方針は不変であり、中央経済工作会議では経済重視の姿勢が改めて確認されました。感染収束やその後の経済活動の立ち直りは不確実性を伴うものの、順調にいけば早ければ第2四半期以降、比較的力強い経済回復が期待できるとの見方が示され、他方、低迷する不動産市場の安定化には資金注入による業界再編・リストラが不可避との見方も示されました。2022年の実質経済成長率は3%程度に留まるにせよ、2023年以降は前年のベースが低いこともあって5%程度をベースラインに上振れ、下振れともに幅を持って見ておきたいとの展望が示されました。

増井氏よりは、前半では、中国の政策方針の新たな変化のポイントについての分析が行われ、銀行セクターにおける問題債権の在処や脆弱部分に対して当局がとっている政策について説明がありました。後半では、「質の高い発展」を実現するための内需拡大策や対外開放政策の継続、そしてイノベーション振興策などについて説明がありました。

パネルディスカッションでは、「ゼロコロナ」からの劇的転換を敷衍した上で、日中間のビジネス往来の復活、中国の投資誘致策や投資環境整備状況、経済安全保障の意識が高まる日本の企業が競争力を強化する方策、低迷する不動産市場が地方財政に与える影響、さらに中国の金融政策・為替相場の見通しなどについて、幅広いディスカションが行われました。

全体を通して、第20回党大会が区切りとなり長い「政治の季節」が終了し、「ゼロコロナ」も解除され、経済重視の姿勢を前面に押し出したものの、課題は山積、という現状が示されました。

パネリストの講演内容については各プレゼン資料を併せご参照ください。

日時

2023年1月11日(水曜日)午後4時~午後5時15分(日本時間)

            午後3時~午後4時15分(中国時間)    

主催 公益財団法人 国際通貨研究所
言語 日本語のみ(英語の同時通訳はございません)
進行 講演 及び パネルディスカッション

パネリスト(敬称略、順不同)

 

福本 智之       資料はこちら          
大阪経済大学 経済学部 経済学科 教授(元日本銀行国際局長)

1989年日本銀行入行。2000年在中国大使館一等書記官。2012年北京事務所長、2015年北九州支店長、2017年国際局審議役(アジア担当総括)、2020年国際局長を歴任、2021年日本銀行退職を経て、2021年より大阪経済大学経済学部教授に就任。株式会社経営共創基盤シニアフェロー、東京財団政策研究所研究員。1989年京都大学法学部卒業、1995年香港中文大学、1996年対外経済貿易大学留学、2008~2009年ハーバード大学ケネディ行政学院フェロー。中国の金融経済に関する業務、調査研究に長年携わる。近著に『中国減速の深層 「共同富裕」時代のリスクとチャンス』(日本経済新聞出版)。

 

 

増井 憲        資料はこちら               
MUFGバンク(中国) 副董事長

1988年東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。1991年北京語言学院留学。中国勤務は上海3回、北京4回、深圳1回、計約20年。2009年当社総合リスク管理部長・企画部長等を経て、2012年深圳支店長、2015年北京支店長などを歴任、2022年より現職。現在、中国日本商会副会長、アジア金融協力協会副会長、中国銀行業協会外資工作委員会副主任等兼職。一橋大学法学部卒業。1990年初頭より、約30年間にわたって、一貫して中国の銀行業務の実務及び金融経済に関わる研究に携わる。

モデレーター

梅原 直樹
国際通貨研究所 開発経済調査部 上席研究員

1989年東京銀行(現三菱UFJ銀行)入行。1989年日比谷支店、1991年台湾師範大学国語教学センターにて中国語語学研修、1992年広州駐在員事務所、1994年大阪支店、1999年グローバル企業企画室、同年外務省出向(現欧州局中央アジア・コーカサス室)、2002年経済協力部。2004年以降、国際業務部、アジア・中国部、アジア企画部等で中国関連業務に従事。2014年より公益財団法人国際通貨研究所出向(現職)。1989年東京大学教養学部教養学科卒業。