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ユーロの光と影~その1:ユーロのプラス効果

ユーロは1999年1月にEU内の11ヵ国で導入された新しい国際通貨です。ユーロ圏諸国は、金融政策の独立性を放棄しても、共通通貨という究極の為替相場安定を選んだわけです。
ユーロを導入する前に、共通通貨のメリットとデメリットは徹底的に議論されました。メリットは、為替の取引コストがなくなり、欧州域内の価格の透明性が高まります。このため、より生産性の高い企業、産業、地域に資本と人材が流れて、全体として欧州経済が強くなるというものです。デメリットは、生産性、インフレ率、景気サイクルなどに格差が発生した時に使える政策手段が限られてしまうことです。最終的には、メリットがデメリットを大きく上回るという期待の下に導入に踏み切りました。
欧州全体のことを言えば、確かに企業の活力は高まりました。中長期的な株価の推移を見れば、明らかに米国に劣らないパフォーマンスを見せています。また、ユーロ圏ひとまとまりで計れば、日米と比べてユーロ圏の方が財政状況が良いのも、民間部門の活力の証左といってよいでしょう。
欧州が、東欧・ロシアなどユーラシア大陸の西半分から中東アフリカに至る大きな地域の、貿易、金融、人材の面での求心力となっているのも、ユーロ導入による一体感の高まりが大きいように思います。もちろん、この求心力がもたらすものの中には難民流入という側面もあるのですが。
ドイツ企業は、それまでのドイツマルク高と永遠に決別し輸出を大いに伸ばしました。ドイツの好調ぶりは、東西ドイツ統一以来の低水準の失業率によく表れています。一方、ギリシャなど南欧諸国にも、国外からの資本流入や建設ブームによる好景気が訪れました。このウィン-ウィンの関係の中に、想定外のデメリットが隠されていました。