ドル化

ドル化とは、米国以外の国において米ドルが自国通貨と並存または自国通貨に替わって利用される現象で、その中でも当該政府によるドル信認の有無や自国通貨並存の有無、ドル発行国である米国の承認の有無等によって、いくつかの種類に分けることができます。
「非公式的なドル化(unofficial dollarization)」は、政府自体は米ドルを自国の法定通貨とは認めていないものの、何らかの理由で米ドルが貯蓄や投資、決済において利用される状態です。このケースは新興国の政治・経済が混乱し、国民による自国通貨への信認が低下した結果自然に発生することが多く、「事実上のドル化(De facto dollarization)」とも呼ばれます。
一方「公式的なドル化(official dollarization)」は、政府が米ドルを自国の法定通貨と公式に認め利用される状態で、政策のオプションであることから「政策的なドル化(policy dollarization)」とも呼ばれます。「公式的なドル化」はさらに、自国通貨が並存する場合の「準公式的なドル化(semi-official dollarization)」と自国通貨を廃止する場合の「完全なドル化(full dollarization)」に分けられます。また、ドル化実施にあたり米国の承認を得ている場合は「正式なドル化(formal dollarization)」、得ていない場合は「一方的なドル化(unilateral dollarization)」と呼ばれます。
「完全なドル化」のメリットとしては、①為替切り下げリスクの消失、②インフレ率の低下、等が挙げられます。ドルの安定した為替変動や米国の低インフレを享受できることで、新興国の政治的・経済的混乱による資本逃避や自国通貨急落による輸入物価の上昇および高インフレを回避できるとされています。この結果、新興国の貿易や投資の活発化が期待できます。一方、デメリットとしては、①独自の金融政策の消失、②自国の中央銀行による最後の貸し手機能(以下、LLR機能)の喪失、等が挙げられます。「完全なドル化」は米国の金融政策に依存することになるので、自国の景気過熱時に発生するインフレ圧力や銀行セクターの流動性危機に対し、利上げや中銀による流動性供給といった対応をとれないリスクがあります。
ドル化が成功する前提条件について明確なコンセンサスは形成されていませんが、自国通貨をドルに置き換えるためのハイパワード・マネー(マネタリーベース)以上の外貨準備が必要との意見や、LLR機能を喪失しても対応し得る健全な銀行システムの構築、あるいは代替的な流動性供給の手段の構築が必要との意見等さまざまです。