人民元の国際化

中国の名目GDPは2010年に日本を抜いて世界第2位になり、2015年にはアメリカの約6割、日本の2.7倍の規模にまで達しています。これは1970年代来の改革開放政策が、2000年代に入り、対外貿易がけん引する形で二桁台の高度成長をもたらしたことによるものでGDPの伸長に伴って外貨準備高も着実に膨らんでいきました。
しかし、2008年に米国発世界金融危機が発生すると、中国はそれまで保有を増加させてきた米ドル建ての準備資産が実は価値が毀損するリスクのある資産だったことに気づき、同時に一国通貨である米ドルが世界の基軸通貨の役割を果たす現在の国際金融システムに対して深い疑問を抱くようになりました。
こうした経験を踏まえ、中国は、2009年より経常取引を皮切りに人民元を国際的に利用される通貨に変えていく方向に舵を切りました。まず、国際金融センターとして高度に発達を遂げていた香港の機能を最大限に活用してオフショア市場での人民元流通促進に力を入れ、それと共に世界各国と二国間スワップ協定を締結して公的セクターにおける人民元保有促進やプレゼンス向上を図りました。他方、国内金融改革や国境を跨ぐ資本取引については引き続き急激な変化を避けて一歩一歩着実に規制緩和や自由化を進める道を選びました。
このような人民元国際化の努力の結果、2015年11月に人民元は国際通貨基金(IMF)の特別引出権(Special Drawing Rights, SDR)の構成通貨になることが決まりました。SDR構成通貨は、長らく米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの4通貨でしたが、2016年10月からこれに人民元が加わります。これにより人民元の国際的なステータスは向上し、世界の公的セクターで準備通貨として採用される機会が増えると見られます。
しかしながら、人民元は今のところグローバル企業や金融機関からハードカレンシーとして認められる通貨にはなっていません。今後、人民元が真の意味で国際通貨となるためには、国際金融市場において人民元がもっと頻繁に利用され、元建て取引が活発化する必要があります。そのためにはオフショア市場での流通促進や公的部門のステータス向上だけでは不十分であり、国内金融市場の更なる改革と国境を跨ぐ資本取引の規制緩和が必要となります。国際金融の世界において中国がその経済規模に見合うステータスを手に入れるためには今後も着実な改革を積み重ねていくことが不可欠です。