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為替相場変動の予測~その3:市場心理要因

市場心理要因

為替相場を変動させる経済的な要因として、最後に市場心理要因があります。相場に関連した事柄に対する市場参加者の判断、予想、期待などを「市場心理」といい、なかでも、相場の先行きに対する見方を「相場観」と呼びます。

①市場心理
 市場心理によって為替相場がどう変動するかは、市場参加者がある指標に対し事前にどう予想していたか、ということがポイントになります。市場参加者の
 予想値はブルームバーグやロイターといった情報ベンダーを通じて前もって知ることができます。例えばアメリカの最新の貿易赤字額について、発表された
 数値が大勢の市場参加者の予想よりも悪いものであれば、ドルは下落を始めるはずです。逆に予想よりも良ければ、ドルは一時的に上昇するかもしれませ
 ん。
 また、その時々の市場において、そもそもどの指標が重視されているのか、ということをつかむことも重要です。例えば先の例で、貿易収支の発表に相
 場がほとんど反応しないことがあります。それは、その時の市場が貿易収支よりも例えば各国通貨の金利水準に注目していたからで、貿易収支で予想外の数
 値が発表されても市場が無視した可能性があります。
②相場観
 市場参加者の相場観がリーズ・アンド・ラグズや投機といった行動を起こし、実需取引から予想される相場とは異なる動きを示すことがあります。
 例えば相場観がドル安で、日本のある輸入企業も同様に予想した場合、この企業はドルが十分下がり切ったと思う時点までドル決済を遅らせることでしょう
 (ラグズ)。こうしたドル買いを遅らせる行動はドル安圧力となり、予想されたドル需給のバランスを崩してドル高になるタイミングを遅らせます。逆にド
 ル高と予想した場合、実際の決済の時期まで待たずに、一年分でも二年分でも、必要となるドルを先物予約の形で早く手当てします(リーズ)。ドル買いを
 早める行動はドル高圧力となります。