為替相場を決めるもの~その1:経常取引

為替相場は外国為替市場における外貨の需給関係で決定されます。この需給関係を形成する基本となる取引が、主に民間部門による実需取引と投機取引、加えて中央銀行といった公的部門による為替介入です。実需取引はさらに、経常取引と資本取引に分けられます。ここでは、経常取引と資本取引がそれぞれどのように為替相場に影響を与えるかを述べます。
(なお為替介入については、後述の「中央銀行の為替介入」をご参照下さい。)

国際間の経常取引

経常取引は、商品の輸出入(貿易取引)やサービスの輸出入に、海外との利子や配当金の受払、海外援助の受払などを含めた取引です。これらの経常取引から成る一国の収支、すなわち経常収支は、その国の国際競争力や内外の景気、インフレといった実体経済の動きに応じて変化します。
日本は1980年代に自動車・電機産業などの国際競争力が強まり、輸出が増加したことから大幅な貿易収支の黒字を計上し、90年代には世界で最大の純債権国になりました。現在は、海外への直接投資および証券投資の積み上がりに伴い増大した投資収益が、経常収支の黒字の過半を占めています。一方、アメリカは1990年代以降貿易収支の赤字が拡大し、今や世界最大の経常赤字国です。
このような経常収支の黒字・赤字は、為替市場における需給に影響します。例えば日本の経常収支の黒字は、外国為替市場でのドルなどの外貨の供給要因となります。貿易やサービスで獲得した多くの外貨は、日本企業が日本国内で使用できるよう外国為替市場で売却され、円に換金されます。外貨が多く売却されることは外貨の供給要因となるので、結果、経常黒字は円高を招きます。
経常赤字の場合は、上記とは逆の需給関係になります。日本企業から支払われる多くの円は、各海外企業の自国通貨に換金されます。外貨が多く購入されることは外貨の需要要因となるので、経常赤字は円安を招きます。