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為替相場を決めるもの~その2:資本取引

国際間の資本取引

資本取引には、直接投資、証券投資、およびその他の投資(外貨預金や銀行融資など)があげられます。
直接投資は、日本企業が海外に生産や販売のための現地法人を設立したり、海外企業を買収したりすることを目的に行う投資、また逆に、海外企業が日本に法人を設立したり、日本企業を買収したりするための投資が含まれています。海外への直接投資は、日本企業が海外への投資に充てるために外貨を購入するので、外国為替市場での外貨の需要要因となりますし、海外からの直接投資は海外企業が外貨を売却して円を購入しますので、外貨の供給要因となります。
証券投資は、日本の機関投資家や個人による海外への債券投資や株式投資、逆に海外の投資家による日本の債券や株式への投資を指します。日本の投資家が海外の債券や株式を購入する時は、基本的に円を対価に外貨を購入して債券や株式を買いますので、外国為替市場における外貨の需要要因となります。海外の投資家が日本の債券や株式を買う時は、外貨の供給要因となります。
その他の資本取引では、例えば日本の投資家が外貨の預金を解約すると外貨の供給要因となりますし、企業が外貨を借り入れると外貨の需要要因になります。

以上のように、経常取引と資本取引から生じる外貨の需要と供給が外国為替市場における外国為替相場を決める基本となります。ただ、外国為替相場は動態的なものです。経常取引においても資本取引においても、市場の参加者の思惑が市場の需給に大きな影響を与えることがあります。
先行きドルが高くなると多くの人が予想すれば、ドルの決済時期を早めたり(リーズ)遅らせたり(ラグズ)することで、相場は短期間に急激な変化を示すことがあります。また予想が極端に一方に偏り、為替市場が外貨の買い一色、あるいは逆に売り一色となる場合があります。このような時は、買い手がいないために売りたい人の出す売値だけが落ちていく、あるいは売り手がいないために買いたい人の買値だけが上がっていく、すなわち「気配」だけが変化していくといった現象が生じます。